第19節 憲法改正の手続

(1)憲法改正とは

 憲法改正とは、正しく改めることであるから、時代の流れや事情の変更があり、あるいは不備が明らかになったなら、それらに応じて変更することが必要になる。日本国憲法自身にも、改正の手続きを定めている。96条1項は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」とし、2項は、「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」と定めている。これによれば、憲法の改正には、3つのステップがあることになる。つまり、@国会の発議、A国民の承認、そして、B天皇の公布である。

(2)国会の発議

 改正のための手続の最初のステップは、国会の発議である。「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議」するとされている。衆議院と参議院のそれぞれで3分の2の承認が必要である。全国会議員の3分の2では、ダメである。

 Column19-1 国会へは誰が原案を提案するのか

(3)国民の承認

 第2のステップは、国民の承認である。「国民に提案してその承認を経なければならない」とされています。この承認手続きは、特別の国民投票をおこなってもいいが、国会の定める選挙の際同時に行おこなわれる投票においておこなってもかまわない。国民からOKをもらうためには、過半数の賛成が必要である。

Column19-2 国民の範囲

Column19-3 過半数の数え方

(4)天皇による公布

 最後そして第3のステップは、天皇による公布である。改正について国民の承認を得たられたときは、「天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」こととされている。

Column19-4 天皇は憲法改正の内容が気に入らないときには、公布を拒否できるのか?

(5)何でも改正できるのか?

 改正手続があるのだから、その手続きさえふめば何でも改正できるか? 日本国憲法の基本原則は、変更できないと考えられている。基本原則は、いわば憲法の個性のようなものでるから、それを変えてしまったら、その憲法でなくなってしまう。だから、現在憲法で保障されている人権を国民から奪うようなことは許されず、民主主義を後退させるような政治のしくみの変更は許されず、そして、戦力を持てることを堂々と宣言するようなこともできない。

Column19-5 憲法改正の限界